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日本の知識・経験をアジアおよび世界に効果的に発信する

日本には、一般的に認知されている以上に、途上国の課題解決に役立つ知識や経験が多く蓄積されており、二国間援助或いは国際機関を通じた諸事業、または民間ビジネスの中で、日本の官民セクターは途上国の開発問題への取り組み、貧困削減の努力に対し様々な知的協力や貢献を行っています。では、その課題とは何なのでしょうか?

私どもは、それは

  1. 「知識や経験共有の需要と供給を合致させること」
  2. 「知的貢献をより効果的に世界に向け発信すること」
  3. 「国際的な議論や対話を通じて知的貢献を常に改善していくこと」であると考え、ここにTDLCプロジェクトの大きな役割があると確信しております。

A.「知識や経験共有の需要と供給を合致させる」

供給先行、それとも需要先行か

世界のインターネット人口が10億人を超える現代、国際開発援助の世界においても、日本から多くの情報が日夜発信されています。しかし、その多くは「供給先行型」の情報発信となりがちです。知的な国際協力において、今最も重要なことは、途上国側の様々な「需要」や事情を十分に考慮した国際貢献ではないでしょうか。



世界120ヶ所に設置され、TDLCの「同士」とも言えるGDLNセンターは、途上国の「知識・経験共有の需要」を察知し捉えるアンテナです。ほぼ全ての途上国で支援活動を行っている世界銀行の情報は、途上国の知識需要のライブラリーであり、世銀が直営するTDLCは、この情報も存分に活用できるのです。

TDLCは、官民諸機関や専門家の「プログラム・パートナー」として共に協力しながら、対象途上国に最もふさわしい国際対話・セミナー・研修プログラムの開発や実施に取り組んでいます。需要を見据え、日本から発信可能・有効な「コンテンツ」や、経験豊かな専門家や専門機関を動員し、知的国際協力の、いわば「需給コーデネーター」の機能を果たそうとしています。

事例① アフリカ中小企業向けトレーニングコース・生産性向上セミナー


アフリカの現地需要についてTDLCコーデネーターが世界銀行 アフリカGDLNチームと調整し、2009年5月~6月、産業発展支援の一環として中小企業向けにトヨタ生産性方式遠隔学習セミナー「生産性向上セミナー」を実施。エチオピアとの政策対話を進めている政策研究大学院大学(GRIPS)と国際協力機構(JICA)エチオピア事務所のご協力を得てエチオピア、ガーナ、ケニア、ウガンダをTDLCと接続。中部産業連盟マネジメント・コンサルタント、松崎久純氏が講師となり、5週間に渡り製造分野におけるノウハウを共有。


「開発途上国のことを考えてくれて、製造分野における自らの成功経験を分かち合ってくれる日本に、感謝しています。今回得た情報は、我が国の生産性、成功のため、とても役に立ちます。引き続き努力をすれば、私たちもトヨタのように成功できるといいです。今後もこのようなセッションを、もっと企画 していって欲しいです。」


― ウガンダマネージメント・インステイチュート、H.M.

事例②:「セーフ・マザーフッドのための看護・助産リーダー育成」プログラム: 
  母子保健

妊産婦死亡率・乳児死亡率が高く、インフラ整備の遅れ、情報アクセス不足が著しいモンゴルで、継続的な看護教育の機会が非常に少ないことを目の当たりにした母子保健の専門家、北里大学看護学部講師の問い合わせから始まった、TDLCとの共同プログラム。

ウランバートルで2009年3月6日、妊婦の心理ケア・アセスメント関連講義をTDLCよりライブビデオで受講、北里大額看護学部部長の指示に従いストレス解消エクササイズで腕を伸ばすプログラム参加者ら

看護・助産教材、病院設備は旧ソ連から導入されたもののままというモンゴルで、講師は知識欲に満ちた看護師らと出会う。TDLCはビデオ会議等ブレンデッド・ラーニング方式を活用した母子保健のリーダー育成プログラムを開発し、遠隔学習を通じた日本の最新知識の共有を目指す。モンゴル看護協会の協力を得て2008年4月~5月、2009年3月の2回に渡り実施、首都のみならず地方都市から800人以上が参加。受講者はコース終了後、勤務先病院・大学・診療所などで各自10人ずつに学習内容を伝え、知識を更に広めていく取り決め。



「セーフマザーフッド遠隔ラーニングコースは、凄く良いです。モンゴルの看護師の数は少ないですが、看護や助産の仕事内容や環境を改善していくことができれば、もっと多くの人が興味を持つようになって、患者のより良いケアに繋がっていくと思います。」


 

―プログラム通訳・翻訳者、同時期の出産経験者・ムンフジャルガル・スヘーさん

B. 知的貢献をより効果的に世界に発信する

世界の開発課題の解決や貧困削減への貢献としての知的協力には、様々な方法があります。調査や分析発表、政策提言・対話、人材開発・教育、情報の共有や技術移転はもちろんですが、鍵となるのは、その知識を真に必要とする、数多くの人々に届けていくことではないでしょうか。

「需給が合致」し、「情報の受け手を数多く動員」、「伝達内容の品質を落とさず、対費用効果の高い情報発信」――TDLC・GDLNコミュニテイの特徴である、世界的な開発ネットワークを駆使しつつ情報通信技術(ICT)と遠隔ラーニング手法による質・量ともに豊かな知的貢献を行うという提案が、ここで活きてきます。

ICTと遠隔ラーニング手法は、費用・人・時間の効率が良く、一定箇所に人が集まる従来の研修事業に比べ遥かに効果の高い研修が可能となります。多国間参加者同士の意見交換・「コ・ラーニング(互いに学びあう)」の促進や、また現地に直接出向くことのできない講師陣の他国からの参加など内容の幅が大きく広がり、限られた資源で、有効な知的発信を持続的に行っていくことができる訳です。

TDLCは各国の「国内ネットワーク」を駆使し、JICAのJICA-NET国内外ビデオネットワーク、国内700以上もの大学参加の「学術情報ネットワーク(SINET)」との協力により、日本国内の各地域の専門家たちを、インドネシア、中国、モンゴル、アフリカなど各国の地方都市の受講者らと結び付けます。

TDLCでは2つの同時通訳ブースに加え、ニ言語会議のための特殊専用設計により、国内参加サイトは全て日本語、国外サイトは英語で、集中的同時通訳が可能です。このため国内参加サイトでの同時通訳は不要、ユーザーにとっての経済的メリットも小さくありません。

また、このような国際機関・グローバルな開発ネットワークの利用による、国際社会へのマルチな発信は、日本が各途上国と個別に進める二国間対話・援助と並行して行うことにより、或いは互いに補完的に利用することにより、非常に有意義なものとなります。

事例①: 「構造力学の基礎」ビデオ講義

2009年8月、パキスタン・ペシャワール工科大学の要望により、パキスタン、バングラデシュ、ブータン、ネパールの官民研究者・実務者を対象としたビデオ講義を、有力パートナー、アジア防災センターが主催。国際復興支援プラットフォーム(IRP)の支援の下、TDLCのアレンジメントと技術サポートによって、南アジア地域向け地震防災対策計画の一環として、地震に対し安全な建物への構造的評価に関する知識の共有を実施。

2009年8月17日、ビデオ講義に参加するパキスタン会場  出席者ら =ペシャワール工科大学提供/TDLC

講師は、構造工学・地震工学・建築構造を専門とする北海道大学名誉教授・石山雄二氏。現地では日本発ビデオ講義のシリーズ化への期待も。



「日本の災害リスク管理知識、特に地震や土砂災害、サイクロンなどに関する専門性は非常に高いものです。南アジア諸国の災害リスク管理実務者や研究者にとって、日本発の講義シリーズの実現が可能であれば、大変有益です。」

―司会進行役、UNDPリージョナル・コーデネーター、ソーヘル・カーン氏

事例②: 災害看護コース

参加者写真途上国の災害被災地で被災者の心のケアが追いつかず、自殺者が増加しているとした報道がきっかけ。GLDNインドネシアと共同で現地看護師向けコースを企画していたTDLCが現地調査を進めた結果、インドネシアでは災害看護学知識の需要が非常に高いことが判明し、日本の専門家の協力を得て2009年2月、インドネシア、東テイモール向け「災害看護コース」が実現し、700人以上が参加。GDLNとインドネシア国内の高等教育機関ネットワーク(INHERENT)、日本からはWHO神戸センター、TDLCを接続した遠隔ラーニングコース。

「常に最前線で働く看護婦は、災害時には平時と異なる病気や怪我の発生に対応しなければなりません。(中略)看護婦の初動応答が被災者の制止の危機にかかわることもあり、災害看護の基礎知識を備えることで災害に強い社会をつくるうえで大きく役立ちます。」

―― インドネシア看護協会・ヤニ代表

「GDLNとINHERENTを利用した災害看護コースは、必ずやインドネシア社会の為に役立つと思います。」

―― GDLN AP、インドネシア国家教育省・ニザム氏

C. 国際的な議論や対話を通じて知的貢献を改善

世界に向けた日本の知的貢献のもうひとつのポイントは、国際的な議論・対話の重要性です。相手とする途上国はもちろん、国際社会を広く見渡し、他国の経験や第三者の見方や意見に耳を傾け、自らの知的発信を振り返り、改善していくことが肝心です。

己の主張や発表は常に積極的に国際社会にぶつけ、異論・反論も敢えて同じ土俵に導く度量と政治感覚を持ち、意見を国際的に戦わせることが、知的貢献活動そのものの質を向上させるとともに、日本の知的発信の注目度を上げ、また内容的にも更に良きものにしていくことと思われます。

事例:東アジア大洋州 災害リスク管理強化セミナー

2008年12月から2009年6月にかけ計6回、世界銀行東アジア大洋州局により実施された遠隔セミナーシリーズ。災害復興計画、リスクファイナンス、災害リスク管理などに焦点をあて、インドネシア、中国、インドなどアジアの各国と神戸、TDLCを接続し、阪神淡路大震災とその復興経験・教訓を共有する。

© 2009 TCGI/WHRU, Daniel Pittet



一回目セッションは、国際復興支援プラットフォーム事務局、兵庫県、神戸市の協力を得て、日本の災害復興後の経験や復興計画等を共有。インドネシア(アチェ、ジャカルタ)、中国(北京)、ベトナム(ハノイ)、フィリピン(マニラ)、ラオス(ビエンチャン)、神戸市、TDLCが接続され、活発な意見交換が行われる。

別セッションでは、ジョグジャカルタや四川省、アチェ、グジャラートが神戸およびTDLCと繋がれ、費用対効果の高い接続を通じて、それぞれの大規模自然災害の復興事業経験者たちが一堂に会し、貴重な知識や教訓、経験を共有。

「ベスト・プラクティスも、バッド・プラクティスも共に経験し、分析しました。そのような情報を世界に発信することが、私たちの役割だと思います。」


     

―― 国際連合地域開発センター兵庫事務所
コーデネーター・安藤周一氏

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