2006年11月10日
世銀報告書「アフリカの成長が直面するチャレンジ:機会、制約、戦略的方向性」
コメンテーターとの議論交え、TDLCにて世界に向け発表
報告書の全文(英語)はこちらでご覧いただけます。

世界銀行の報告書「アフリカの成長が直面するチャレンジ:機会、制約、戦略的方向性」の世界に向けた発表会が2006年11月10日、TDLCにて開催された。報告書の筆者、世銀アフリカ地域パートナーシップ・グループ・アドバイザーのベノ・ンドゥル氏は、コメンテーターとして出席した日本政府や開発援助機関代表ほか約100人の参加者を前に、アフリカの成長を促す4つの「I」―インフラ(Infrastructure)、投資(Investment)、技術革新(Innovation)、制度強化(Institutional Capacity)など、レポートの概要を説明した。
日本は成長政策を支持
この報告書は2005年9月に公表された世銀の「アフリカ行動計画」に基づき、アフリカの経済成長の要因を特定し、制作助言を行うための分析としてまとめられた。東京が発表の場として選ばれたのは、アフリカにおけるアジアの役割を強調するためで、発表会のファシリテーター、世銀アフリカ地域担当チーフ・エコノミストのジョン・ペイジ氏は「日本は一貫してアフリカにおける成長政策をとるよう訴え続けてきた」と評価した。
冒頭、世銀副総裁兼駐日特別代表の吉村幸雄氏は、世銀はアフリカの貧困削減と経済成長について具体的な成果を出すことを目標に掲げている、と説明。このため、「日本との政策対話やプロジェクトレベルでの具体的な協力の促進は重要だ」と述べた。
3つの課題
報告書は、以下の課題をテーマとしている。 1.国によって大きく事情の異なるアフリカ諸国において、成長の機会や選択肢とは? 2.このような機会の追求を阻む要因は? 3.アフリカ諸国が行動する際、その支援にあたるアフリカ各国政府や世銀などの開発パートナーは、どのような戦略的選択をとるべきか?
プレゼンテーションでンドゥル氏は、過去45年間におけるアフリカの多様な成長の経験に関する分析を紹介。他地域に比べて生産性の向上が進まず、政策やガバナンスなどの問題が要因となって成長のペースが鈍り、地理的な不利、資源の不適切な利用も事態を悪化させた、と述べた。
ンドゥル氏は、冒頭の4つの「I」を行動の最重要分野と位置づけた。各国個別の分析が必要だが、戦略的方向性については共通の課題も多く、民間投資や効率の追求、競争原理の導入などが必要だと結んだ。また、アフリカ諸国に対しては、自分たちの手で運命を切り開くように、リーダーシップや協調行動をとるよう促し、開発のパートナーには、よりよい援助や、貿易環境の改善を求めた。
日本の政策担当者は
日本側のコメンテーターは開発に絡む経験に基づいて発言。政策側から、経済産業省大臣官房企画官(通商金融・国際担当)の前田充浩氏は、アフリカ援助におけるインフラの重要性には同意しながら、その実現のためにはODA以外にも金融上のメカニズムを考案すべきだ、と主張した。
財務省国際局開発機関課長の木村茂樹氏は、過去にアフリカといえば援助の対象と見られていた、と振り返り、「古いイメージを改め、アフリカをビジネス・チャンスと位置づけたことは感慨深い」と評価した。また、アジアとアフリカの経済成長の比較について自説を紹介し、アジアでは金融部門が育ち、大きな役割を担った、と語った。
外務省国際協力局国別開発協力第二課長の橋本尚文氏は、ODAに携わってきた経験から、「報告書ではビジネスチャンスを活かすための能力開発について述べられているが、ODAを適切に運用するための能力開発も必要だ」と述べた。
問題解決に必要なアフリカのリーダーシップ
援助の実施側を代表して、国際協力機構(JICA)アフリカ部調査役の笹岡雄一氏は、報告書は包括的な内容になっている、と評価する一方、近年のアフリカの経済成長については、新興工業国が域内で果たす役割についても議論を求めた。
また、国際協力銀行(JBIC)開発第4部次長の庄司仁氏は、報告書はアフリカの諸問題を理解するうえで有用だとし、「我々実施側にとっては、相互に関連するこれらの課題をどう解決するかが問題だ。アフリカにも意識の変化とリーダーシップが必要だ」と語った。また、エイズや農業問題も報告書に含めるべきだ、と述べた。
神戸大学大学院国際協力研究科副研究科長教授、高橋基樹氏も農業の重要性を指摘。アジアーアフリカの比較を安易に行うことに疑問を呈し、日本もアフリカの経験に学ぶべきだ、と訴えた。
